万博

「1坪のハグ」が描く、やさしさの設計──大阪・関西万博で誕生した、新しい“安心のかたち”

自分で環境を調整できる、わずか1坪のカームダウン・クールダウンルーム

2025年4月、世界が注目する大阪・関西万博に、新しいコンセプトのカームダウン・クールダウンルーム──「1坪のハグ」が誕生しました。
音や光、人混みに敏感な感覚過敏・自閉症スペクトラムの当事者はもちろん、同行する家族や支援者までを対象に、にぎわいの中でも“自分のペースを取り戻せる”安心の空間を、
快適すぎて動けなくなる魔法のソファ「Yogibo(ヨギボー)」を展開する株式会社Yogibo(以下Yogibo)が大阪・関西万博のサプライヤーとして提供しました。
温度や照明の明度・色温度、ソファの配置を利用者自身が調整できるため、わずか1坪(約3.3m²)でもパーソナルな落ち着き方を選択できる空間です。

一人ひとり異なる感覚と合理的配慮

近年、人混みや騒音、強い光にさらされることで不安や混乱を覚える人が増えています。
障害者差別解消法の施行や「合理的配慮」の概念が浸透し始めたものの、スペースや予算の壁は依然として厚く、感覚に寄り添う空間はまだ十分とは言えません。また「安心を得る条件」は人それぞれ。狭く包まれると落ち着く人もいれば、閉塞感を覚える人もいます。
そんな多様性に柔軟に応えつつ、限られた広さの中で設置できるモデルが求められています。

ただの「椅子」ではなく、「安心できる居場所」へ

Yogiboカームダウンルーム

Yogiboがカームダウン・センサリールームに関わるきっかけとなったのは、医療・教育・福祉の現場から届いた「普通の椅子ではなくYogiboを置きたい」という声でした。
繰り返し寄せられる声を通じて、Yogiboは単なる家具ではなく、“安心して身をゆだねられる存在”として求められていることを実感し、今回は“安心できる居場所づくり”に挑戦しました。

多様な視点が交差する対話による共創プロセス

「1坪のハグ」の空間づくりは、ユニバーサルデザインの専門家、臨床心理士、子どものこころ専門医、感覚過敏や障がいの当事者、空間デザイナーなどが集まり、対話を通じて知見を共有することから始まりました。
対話を重ねる中で導かれたのは、「落ち着ける環境は人によって少しずつ異なる」ということ。だからこそ、自分で環境を調整できる“余白”が必要だという気づきが、“1坪のハグ”構想のベースとなりました。

「一坪のハグ」検討委員

橋口亜希子様 村中直人様 加藤路瑛様 黒川駿哉様
橋口 亜希子 村中 直人 加藤 路瑛 黒川 駿哉
キャリアコンサルタント / 株式会社Bridges to Inclusion 代表取締役 / ユニバーサルデザインコンサルタント 臨床心理士 / Neurodiversity at Work 株式会社 代表取締役 / 一般社団法人 子ども・青少年育成支援協会 代表理事 感覚過敏研究所 / 株式会社クリスタルロード 代表取締役 医学博士 精神科医 / 慶應義塾大学医学部 / 精神・神経科学教室 特任助教 / 子どものこころ専門医
加藤大貴様 江頭実里様
加藤 大貴 江頭 実里
株式会社ePARA 代表取締役 / NPO法人市民後見支援協会 理事
株式会社ePARA ピアサポーター / 全盲eスポーツプレイヤー
【ファシリテーター】
中川悠様
中川 悠
大阪国際工科専門職大学 工科学部 准教授 / NPO法人チュラキューブ 代表理事 / 株式会社GIVE&GIFT 代表取締役
【デザイン / 設計・施工】株式会社L&B
七種珠水様
 七種 珠水
株式会社L&B 代表取締役
【主催】株式会社Yogibo
大森一弘
大森 一弘
株式会社Yogibo 執行役員 / TANZAQ担当

インクルーシブデザインで生まれた、選べる安心のかたち

当事者と専門家が対話を重ねてコンセプトを導いていく「インクルーシブデザイン」の取り組みを通して、「マニュアル的な正解ではなく、人によって異なる“安心”」を実現すべく、以下の仕様を実装しました。

  • 柔らかな布と曲線フォルム
    壁・天井・床を布で包み、圧迫感を抑えた曲線で構成。触れても刺激を感じにくい素材が、安心と安全を両立します。
  • セルフチューニング可能な照明
    明度・色温度を無段階で調整できる間接照明により、落ち着いた照明からスヌーズレン的な刺激まで自由に選べます。
  • 自由なリラックスを実現するYogiboソファ
    軽量で姿勢もレイアウトも自由自在。身体を優しく包み込むビーズソファが、深いリラックスを促します。

<設置されたYogibo>

  • Yogibo Lite Premium(ヨギボー ライト プレミアム)
  • Yogibo Pyramid Premium(ヨギボー ピラミッド プレミアム)
    どちらのモデルも、Yogiboのプレミアムシリーズのソファ。公共施設などで、1日に何度も人が座る環境でもへたりにくい最高品質のビーズを採用し、快適な座り心地が長くつづくのが特長。
    上下左右にやわらかく伸びる素材は、座る人の身体のかたちにそっと寄り添い、包み込むようにフィット。
    やさしい肌ざわりとともに、身をあずけるだけでふっと緊張がほどけていく感覚を味わえます。
    感覚に敏感な方にも安心して使っていただけるやわらかさと安定感で、心と身体がやすらぐ場所をつくります。

“正解を押しつけない空間”への共感

カームダウンルーム

万博の開催に伴い、SNSには「光を落としてソファに包まれると数分で落ち着いた」「子どもが自分で照明を操作できたことで安心していた」といった声が投稿されました。
また、発達障害の当事者や保護者、不登校支援者、小児理学療法士の方々からも歓迎のコメントが寄せられました。

「一坪のハグ」が社会をやさしくする余白として

わずか坪の空間でも、そこに“やさしく包まれる感覚”があれば、人は安心できます。
そんな想いから、「1坪のハグ」という名前が生まれました。

音や光などの刺激がつらいとき、緊張が強く働いているとき、急に不安に襲われたとき、そっと自分のペースを取り戻せる空間が社会にあることの大切さ。
「1坪のハグ」がその一例となり、やさしさの余白を社会に広げるきっかけとなることを、Yogiboは願っています。

導入概要

公開期間:2025年4月13日(日)~10月13日(月)

設置場所:休憩所③ 静けさの森 応急手当所

開室時間:9:00~22:00

詳細情報:https://www.expo2025.or.jp/universalinfo/facilities/

公式サイト:EXPO 2025 大阪・関西万博

安心のかたちを、これからの空間に

検討委員会で整理された評価指標と素材条件は、現在ガイドライン化が進行中です。
学校、病院、公共交通機関など日常空間への展開に向け、汎用モデルとしての公開が予定されています。
また、「1坪のハグ」検討委員は、今回の取り組みで得た知見の論文化を進めており、スタジアムや医療・商業施設、公共交通機関などからも導入に関する問い合わせが届き始めています。

Yogiboは今後も、多様な人が共に快適に過ごせる環境づくりを目指し、取り組んでいきます。

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